Quantcast
Channel: 富田林百景+ 「とんだばやし」とその周辺の魅力を発信!「ええとこ富田林」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2615

じないまちの鍾馗さん

$
0
0

富田林じないまちのいろいろな風景を見て回りました。今回は「鍾馗(しょうき)さん」。「鍾馗さん」はじないまちからどんどん減っています。

 

〈田守家住宅〉城之門筋堺町 

18世紀中期(民家では2番目に古い)屋号:黒山屋 生業:木綿問屋

厨子(つし)二階平入り・入母屋・本瓦葺き・鍾馗さん・忍び返し・煙出し

 

屋根に鍾馗さんが見えます。

 

鍾馗さんは長い髭をたくわえ、中国の官人の衣装を着て剣を持ち、大きな眼で何かを睨みつけています。

 

〈杉田家住宅〉城之門筋堺町 

18世紀後半の建設 屋号:樽屋 生業:油屋 代々「樽屋善兵衛」

厨子(つし)二階平入り・切妻/入母屋・本瓦葺き・鍾馗さん・忍び返し・煙出し・駒寄せ

 

お向かいの杉田家住宅でも屋根の下に鍾馗さんがいます。

 

目を開いて、きまじめにいつもなにかを見張っているように見えます。

 

〈渋谷家住宅〉城之門筋一里山町

大正期、本二階平入り・入母屋・桟瓦葺き・鍾馗さん・銅板葺き

じないまちに2軒残る銅板葺き建物。

 

主屋の切妻部分、道路側に置かれている鍾馗さん。

 

じないまちの鍾馗さんは全部瓦でできています。

 

〈喜田家住宅〉亀ヶ坂筋北会所町 

建設期不明 主屋は厨子(つし)二階妻入り・切妻・隣家(本二階平入り)複合・桟葺き・駒寄せ

 

 

なんか、ふたつ乗っかっています。

 

家屋の切妻部分にいる鍾馗さん。ここにいるのには理由があります。

 

もうひとつ置かれているものがあります。これ、何でしょうね?

これも鍾馗さんなんでしょうか?

 

鬼瓦

「厄災」を除(よ)ける鬼瓦。「邪気」を鬼をもって制す。

鬼瓦はお家にやってくる「邪気」によっておこる「厄災」を除ける意味が込められています。

 

鍾馗さん

じないまち富田林でいくつも見かける鍾馗(しょうき)さん。きまじめにいつもなにかを見張っています。で、いったいなにを見張っているかというと、向かいのお家(うち)の鬼瓦がはねかえした「厄災」がこっちにこないように見張っておられるのです。

 

杉田家住宅の鬼瓦と鍾馗さん

唐の時代に鬼を退治したという道教の神様、鍾馗さん。 

歴史を紐解くと 中国は唐の時代、玄宗皇帝が 病に臥している時、玄宗の前に小鬼が現れ、玄宗の玉笛と妻「楊貴妃」の匂い袋盗もうとしました。 鬼の手が玄宗にかかろうとした時、夢枕に髭面の大男が現れあっという間に退治してしまいました。

夢枕に現われた大男は「鍾馗(しょうき)」と名乗り、曰く「私は科挙の試験に失敗したことを恥じ、自ら命を絶ちました。にもかかわらず、帝が手厚く私を葬っていただいたことを感謝しております。今日はその恩に報いるため参りました。」と語りかけました。

玄宗が夢から覚めると病はすっかり癒えて元気になっており、鍾馗さんが鬼を退治し帝の病が癒えたという話は、 あっという間に国中に広まり、道教の神として祀られるようになったということです。

 

向かいの田守家住宅の鬼瓦と鍾馗さん

向かいの鬼瓦に対峙して、眼光 鋭く睨み返します。「厄」や「災い」は直進してくると思われていましたから、鬼瓦さんが反射した「厄」や「災い」を鍾馗さんがまたはね返すということですね。

江戸中期頃、京都の街中においては、家を建てた時に鬼瓦を屋根に置きました。すると、向かいのお家の娘さんが原因不明の病にかかって、なかなか治らない。お家の人が心配なさって陰陽師にみてもらったところ、お向かいのお家の屋根でがんばっている鬼瓦が除けた災いであることがわかりました。

そこで、お家の人が中国で人気の鍾馗さんを自分とこの屋根にあげたところ、娘さんの病気は平癒したそうです。

そうして、京の街の「鬼瓦」と「鍾馗さん」の睨み返しが周辺の町家に拡がり、富田林にも「鬼瓦」と「鍾馗さん」の関係が成立したようです。

 

〈石田家住宅〉 東筋堺町

明治以降建築? 生業:醤油製造業 厨子(つし)二階平入り・入母屋/切妻・桟瓦葺き・駒寄せ・犬矢来

 

鍾馗さんは、元々中国の民間伝承に伝わる道教系の神で、富田林じないまちには現在7つの鍾馗さんがいます。

 

〈橋川家住宅〉亀ヶ坂筋一里山町

厨子(つし)二階平入り・切妻/入母屋・桟瓦葺き・駒寄せ・袖うだつ

 

橋川家の裏の建物。通気口なのか煙出しなのかよく解りませんが、そこに鍾馗さんがいます。

 

鬼門の方向(東北)を守っているようにも見えます。

 

そして、鬼かなにかの上に乗っかっているようにも見えます。

 

〈青木家住宅〉富筋御坊町 本二階平入りの新しい建物。

 

新しく建てられたお家ですが、平入り部分の鍾馗さんがいます。

 

〈旧田中家住宅〉本町 国登録有形文化財

建設:明治前期 厨子(つし)二階平入り・入母屋/切妻・桟瓦葺き・むくり屋根・袖うだつ

 

ここからは周辺の地区です。

屋根から降ろされた鍾馗さん。なんか淋しそう。

 

〈用木家住宅〉富田林市本町

建築年代:大正期 厨子(つし)二階平入り・入母屋/切妻・黒漆喰・桟瓦葺き・鍾馗さん・忍び返し

 

ここも平入り部分に居ます。

最近古い建物を立て直したり、壊すことが多くなり、2017年にじないまちで調査した時は十数個あったのですが、今回の調査で半分以下の7個になっていることが判明しました。

鍾馗さんは過去のものになってしまったのでしょうか?

関連記事:

じないまちの持ち送り 2025.3.6

じないまちの駒寄せ その3 2025.2.27

じないまちの駒寄せ その2 2025.2.22

じないまちの駒寄せ その1 2025.2.20

じないまちの犬矢来 2025.2.8

じないまちの忍び返し 2025.2.3

じないまちの駒つなぎ 2025.1.24

〈リバイバル・アーカイブス〉鍾馗さんと鬼瓦 2017年5月24日

 じない町の鍾馗さん 2015.7.27.            

2025年3月17日 アブラコウモリH

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2615

Trending Articles