西野々古墳群1号墳 明八塚(めはちづか)
2018年10月28日(日)に富田林教育委員会、大阪市立自然史博物館、地学団体研究会大阪支部主催で、「100万年の自然と人をめぐる石川ハイキング」がありました。60名近い参加者があったこのハイキングは、富田林市域を流れる石川のポイント毎の観察地点を設け、自然の成り立ちやそれに伴う人々のくらしの変遷をそれぞれの分野の先生に解説していただき、巡りました。
このコースを再度調査し、新たに解ったことを加えてご紹介したいと思います。見どころが多いのでいくつかに分けてご案内します。
今回は現地学習で説明のあった「西野々古墳群・田中古墳群」です。
横山汐湧石を見た後、石川右岸の道(市道彼方長野線)を北向きに行くと、道のすぐ横に明八塚が姿を現しました。
6世紀前半の円墳で、直径46m、墳丘の高さ6mと、西野々古墳群では一番大きな古墳です。
墳丘の調査はされていないので詳細は不明ですが、1979年と2010年に周囲を発掘調査した時に、幅6.5m、深さ0.8mの周濠が巡り、そこから6世紀前半の須恵器片と円筒埴輪が出土したそうです。
伝承によれば、かつては大きな天井石が露出し、南に向かって開口した石室があったと云われていることから、横穴式石室があったものと思われます。
Google Earth Proによる空中写真では、西野々古墳群の様子がよくわかります。
石川右岸の平坦な河岸段丘上に4基(5基ともいわれる)の円墳・方墳が築かれています。
1号墳は道路で欠損していますが周濠が見てとれます。2号墳(千代塚、円墳)は墳丘部の土砂が崩され形が変形しています。3号墳は方墳ですが、これも大きく削平され変形しています。
この辺りは田んぼで、3km余り先の井堰より引いた井路の支流で灌漑されています。
2号墳 千代塚 円墳
墳丘中央部をかなり堀り取られた状態になっています。周りを囲む石垣は後の時期に田んぼに土砂が崩れるの防ぐために築かれたもので、葺石のように全体を覆うものではありません。
中央部の凹地には大きな自然石が残っていますが、石室に使用されていたものかは判明しませんでした。
2号墳より1号墳を望む。
1号墳の周濠の周りを井路が囲むように流れます。回りは田んぼで、おそらく6世紀前半の古墳時代は、荒芝地に古墳が築かれ、後の時代に上流に井堰が築かれ、井路が引かれることにより水田耕作が可能になったと思われます。
こちらは西側から見た見た3号墳 方墳。
現在にいたるまで削平されて原型をとどめていませんが、比較的この方向からは方墳である形状が解ります。(手前の一辺が直線状) 背後の山は嶽山です。
4号墳 円墳
3号墳(南南東)より望む。田んぼの向こうには民家があり、その背後は結のぞみ病院です。
4号墳は墳丘上に祠があります。
西北西から見た西野々古墳群の4つの古墳
西野々古墳群を始め、富田林南部の石川右岸に現存する3つの古墳群。
表記の通り、この3つの古墳群は築造された時期、立地、地目、標高が異なります。
およそ100年という比較的短い期間に3つの特徴的な古墳群が造られたことは興味深いことです。
西野々古墳群は 低位河岸段丘上の平地(標高85m)に立地し6世紀前半の築造と考えられます。
田中古墳群は西野々古墳群に対して比高差25m(標高120m)で、嶽山(284m)の西斜面の丘陵の上に6基点在します。
嶽山古墳群は群集墳で23基あり、田中古墳群の南南西670mのところにありますが、嶽山と金胎寺山(標高296m)が形成する西側の急斜面の尾根に立地し、標高が120~200mの間に支群を形成しています。
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富田林市の文化財課が発行している富田林市の遺跡分布図ですが、古墳が羽曳野丘陵の東端に連続的に築造されていることと石川をはさんで右岸(東部)の篝山(かがりやま)の丘陵(低位河岸段丘面)から楠風台の中位河岸段丘面、嶽山・金胎寺山の西斜面に点在していることがわかります。
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この表は市文化財課の遺跡分布図を元に作成した「富田林市域の古墳」の表ですが、富田林市域に多くの古墳が造られているのがわかります。
そして、4世紀後半から7世紀後半の300年にわたり、市域のどこかで前方後円墳、円墳、方墳、前方後方墳が造られているのがわかります。
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ところで、この表をよく見ると、富田林市域では銅鏡が出土する4世紀後半の前期古墳と、6世紀後半から7世紀後半の横穴式石室をもつ後期、終末期古墳が多いことがわかります。
それに反して、大王家の百舌鳥古市古墳群の巨大古墳が連綿として造られた4世紀末から6世紀初頭の250年間の古墳が少ないというのも特徴的かと思われます。
玉手山古墳群などもそうですが、百舌鳥古市古墳群が造られた時代にその周辺の古墳の築造が少なくなるという現象は何か意味するものがあるのでしょうか?
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(すみません。ここから先は後日書かせていただきます。)
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